「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」

特に二つを比較してという意図ではないが、たまたま同じ時期にレンタルしたので、米国、英国のバディものアクションのコメディについて、随想しつつ、それぞれの感想など。
「アザー・ガイズ」は米国製作、監督アダム・マッケイ、主演ウィル・フェレルのコンビは、「俺たちニュースキャスター」「俺たちステップ・ブラザース」などでもコンビを組んできていることから、本作のコメディ作品としての質は保障されているようなもの。

一方、「ホット・ファズ」は英国製作、監督エドガー・ライト、主演サイモン・ペッグニック・フロストのトリオは、この前作「ショーン・オブ・ザ・デッド」でゾンビ映画への熱いオマージュを捧げた作品で、ホラーやコメディへの愛とセンスには信頼大。

バディものアクションのコメディってだけじゃなくて、そうした気心の知れた仲間で作っている、というところも共通してる。
この両作、ネタにしている映画にも共通しているものがあって、わかりやすいところでマイケル・ベイ監督の「バッド・ボーイズ」シリーズ、「ホット・ファズ」ではそのタイトルも劇中に出てきて、どこかうやうやしくオマージュを捧げている。「アザー・ガイズ」では開巻早々派手なアクションを繰り広げるサミュエル・L・ジャクソンとドゥエイン・ジョンソン(ザ・ロック)のコンビの活躍が、まんま「バッド・ボーイズ」なノリで、ニューヨークの街中を派手にカーチェイス、揚句車ごとバスに突っ込み、で追いつめた犯人が少量のドラッグを所持していただけ、というギャグ。さらに、この2人壮絶な最期を遂げるんだけど、これがバカバカしくて最高。まあ、この二作、同じ母胎から生まれた兄弟のような作品という見方も、できる。
こういう映画は、勿論多くの元ネタとなる映画を知っていた方が楽しさは倍増するんだろうけど、残念ながらアクション映画はそれほど観ていない。このシーンは、あの映画のあのシーンを、あのセリフをパクってる、なんて知ったかぶれない。でも、元ネタ知らないからその映画を楽しむ資格がないなどと思いたくないし、そもそも元ネタ探しにそれほど興味はない。だからか、タランティーノの「キル・ビル」はあまり好きでない。いかにも元ネタ大会みたいなノリを感じてしまうので。

「アザー・ガイズ」は、デスクワーク大好き刑事のアレン(ウィル・フェレル)と現場でバリバリ活躍したい熱血漢のテリー(マーク・ウォルバーグ)の凸凹コンビが巨大金融詐欺事件に挑む、ってのが大枠。主役がウィル・フェレルなのでコメディ色が強いけれど、これ、テリー側の視点でストーリー追っていくと、案外真っ当にバディものアクションとして成立している。カーチェイスも手抜きがなくて見応えある。ただ、車が赤いプリウスで、BGMにママス&パパスの「monday monday」を流すってのがおかしい。
扱ってる事件が金融ってのも時代性感じる。エンドロールにその名も出てきたけど、これ、2008年に逮捕された元NASDAQ会長バーナード・マドフの金融詐欺事件をモチーフにしてるんだね。金融、経済には疎いのでこの事件の詳細は、Wikipediaに載ってるくらいのことしか知らない。マドフをモデルにしてるのかどうかはわからないけど、本作で詐欺を働く投資家を演じたスティーブ・クーガン(偶然にも「ホット・ファズ」にもゲスト出演している)が胡散臭くて、なかなかいい。
悪役がドラッグを扱ってるだとか、人身売買や武器密輸に関わってるだとか、そういうわかりやすい悪役ってのが描きにくくなっているのが最近のアクション映画なんだろう。「ダイハード4.0」もサイバーテロだったし。見えない敵、わかりづらい悪事。むしろ善悪はアメコミの世界を借りた方が描きやすいのかもしれない。今時、生身の人間がアクション映画の主人公、というのがすでにコメディにしか見えない、というのが「アザー・ガイズ」、と。コメディといっても切り口はブラックで、社会風刺もあって、ウィル・フェレル主演のおバカなコメディという印象は薄い。
それでも、学生時代のアレンが女友達のボディガードを引き受けたのが始まりで、段々にヒモになって身を落としていくとか、冴えない風采のアレンがやたらホットな女性に色目を使われてモテモテとか、笑えるところもあり。

ホット・ファズ」は、成績優秀の警察官ニコラス(サイモン・ペッグ)があまりの優秀さに妬まれて、田舎へ左遷されてしまう。そこでは犯罪は起こらず、住民も当地の警察官ものんびりとしている。署長の息子で、相棒になったダニーは職務は適当で、ハリウッドのポリスアクション映画マニア。堅物とボンクラの凸凹コンビが、一見平和な町を牛耳る秘密結社に立ち向かうってのが大枠。
「アザー・ガイズ」がバディものアクションをシニカルに扱っていたのに比べると、こちらはずっと愛情を感じさせるコメディに仕上げている。派手なカーアクションや銃撃戦なんて絵空事、そんなことは滅多に起きないのだよ、ましてこんな田舎町じゃね、とでもいうようなニコラスの態度が示すように、前半は退屈な描写が続く。そこを、短いカットをシャッフルしてテンポよく、ユーモアを交えて見せるあたりはエドガー・ライトの技。ところが一見事故のように見せかけられた不可解な事件が続発、調査を進めていくと秘密結社の怪しい一面が、という中盤の展開はオカルト調。バディものアクションとオカルト・ホラーのミスマッチが面白い。新聞記者が不慮の死を遂げるという「オーメン」を想起させるシーンは、ゴアたっぷりに描かれて、この辺の茶目っ気がいいなあ。
ラストは田舎町で、おじいちゃん、おばちゃん相手に“まるでハリウッドのアクション映画”みたいな銃撃戦。これがやりたかったんだな、町興しみたいなもんだな、でも、そこに燃える、というより温かさがある。思えば「ショーン・オブ・ザ・デッド」もそうだったんじゃなかったっけか、イギリスに、いや自分の町にゾンビを招待しよう、ってんで作られた映画じゃなかったっけか。

身の丈サイズでバディものアクション映画を消化しようとした「ホット・ファズ」の方に惹かれる。